不育症とは「妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない(出産できない)状態」と定義されます。当院では、原因に関わらず2回以上の流産を繰り返されている場合は、不育症として精査をお勧めしています。原因ごとに適切な治療方針を提供させていただきます。不育症検査を行う場合、お住まいの地域によって助成金が使える場合があります。

不育症の原因

不育症の主な原因として、胎児染色体異常、夫婦染色体均衡型転座、抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常などが挙げられます。

胎児染色体異常

精子や卵子の染色体の数に異常があると、結果的に染色体の数に異常を持った胚(受精卵)が形成されます。このような胚は、着床しても早期に胎児の寿命が尽きて流産してしまうことが大半であることが分かっています。特に女性は加齢に伴い、染色体の数的異常のある卵子が排卵する確率が増加することが分かっています。流産の原因のほとんどが、胎児の染色体異常だと考えられます。

→検査方法:流産絨毛を使った絨毛染色体検査を行うことで判明します

→対応策:2回以上の流産歴がある場合は着床前遺伝学的検査(PGT)の適応となる場合があります 

夫婦染色体均衡型転座

夫婦のどちらかの染色体に均衡型転座(相互転座、ロバートソン転座など)を認める場合に、両親の染色体情報を引き継いだ、染色体異常を持つ胚(受精卵)が形成される確率が増加します。その結果、流産の確率が通常よりも高くなります。

→検査方法:ご夫婦の血液検査での染色体検査を行います

→対応策:均衡型転座が見つかった場合、着床前遺伝学的検査(PGT)の適応となります 

抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome:APS)では、血液中に血栓ができやすい傾向になり、胎盤内の血管にできた血栓が、血流障害を起こす事で流産を引き起こすということが主に言われています。APSは、診断基準を満たした場合において、治療法が確立されています

APS診断基準

【臨床所見】

1.血栓症既往

2.妊娠合併症

(a)妊娠10週以降の胎児奇形のない1回以上の子宮内胎児死亡

(b)重症妊娠高血圧腎症もしくは胎盤機能不全による1回以上妊娠34週以前の早産

(c)妊娠10週未満3回以上連続する原因不明習慣流産

【検査基準】

1.ループスアンチコアグラント 陽性

2.抗カルジオリピン抗体IgGあるいはIgM 陽性

もしくは

抗カルジオリピン・β2グリコプロテイン1複合体抗体 陽性

※臨床項目が1項目以上あてはまり、検査項目が1項目以上陽性なとき抗リン脂質抗体症候群とする

※検査は疑陽性が多いため、12週間後に再検査をして陽性が持続した時に陽性と判断する

Miyakis et al. J Thromb Haemos 2006より一部改変

→検査方法:血液検査(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインI複合体抗体、抗カルジオリピン抗体)を行います

→対応策:妊娠期間中に抗凝固療法(内服薬と注射)を行います

子宮形態異常

中隔子宮、双角子宮、重複子宮などの先天的な子宮の形態異常が、妊娠後の流産や早産の原因になる場合があります。

→検査方法:超音波検査、子宮鏡、MRI検査等を行います

→対応策:中隔子宮では、子宮中隔切除術の適応になる場合があります