体外受精とは、高度生殖医療(ART:Assisted Reproductive Technology)の一部であり、採卵、体外受精や顕微授精、胚培養、胚移植などを総称してART(アート)といいます。

一般不妊治療を行なったが妊娠に至らなかった場合や、検査で不妊の原因が分かり、ARTへステップアップする場合など適応は様々です。

2022年4月以降、年齢制限と回数制限はありますが、ARTが保険適応となりました。

女性が43歳以上のご夫婦がARTを行う場合は自費診療となります。

あらかじめ、保険と自費の治療費をご確認ください。

また当院でARTを行う場合は、事前に無料の体外受精セミナーを受講する必要があります。
セミナーは当院の受診歴が無い方でも予約可能です。

ARTの適応

卵管性不妊

子宮卵管造影検査で卵管閉塞を指摘された場合や、手術等で卵管切除を行なった場合などが当てはまります。精子と卵子が出会う場所である卵管を使用できないためにARTを行うことになります。

男性不妊

精子の数運動性に問題があり、妊娠に至らない場合です。ARTの中でも顕微授精の適応となります。

免疫性不妊

抗精子抗体が産生されることで、精子の通過性や受精が妨げられる場合です。抗精子抗体は採血で検査できます。精子不動化抗体価によりARTの適応となります。

原因不明不妊

はっきりとした不妊の原因はないが、一般不妊治療を行なっても妊娠に至らない場合です。複数回人工授精を行なっても妊娠しない場合ARTへのステップアップをお勧めしています。

ARTの流れ

1.卵巣刺激

月経時から排卵誘発剤の内服薬や注射を使って卵巣を刺激して卵子を育てていきます。注射に関しては、連日で1週間前後の注射が必要となる場合があります。卵巣刺激中は、超音波で卵巣の状態を確認し、採卵日を決定します。

当院では多種多様な卵巣刺激方法が可能です。患者さんごとに、適した刺激方法をご提案させていただきます。

Topic

通院での注射をご希望の場合は、休日や夜間でも対応しています。
お仕事等で連日の通院が難しい場合は、自己注射も指導させていただきます。

2.採卵

超音波で確認しながら、専用の採卵針で卵巣を穿刺して卵子を回収します。

採卵時は痛み止めの局所麻酔を行いますが、ご希望があれば静脈麻酔での鎮静を追加した採卵も可能です。

朝8時~9時頃に採卵して、ご帰宅いただくのは昼12時くらいです。

Topic

当院では独自の局所麻酔法をご提供しており、以前の方法と比べて痛みが減少したという高い評価をいただいております。

3.受精(体外受精or顕微授精)

採卵の当日に精子を採取していただき、採卵後に受精を行います。受精方法は2種類あり、当日の精液所見や適応に沿って選択します。

体外受精:採取した卵子と精子が培養液中で自然に受精するのを観察する方法です。
精液所見に問題がなければ通常は体外受精を選択します。

顕微授精:採取した卵子に専用の針を用いて精子を注入して授精させる方法です。
精子の数や運動性が低い場合や、受精障害等がある場合は顕微授精を選択します。

Topic

お仕事等で採卵当日に精子を取ることが難しい場合は、事前に精子凍結をしておくことは可能です。
凍結した精子を用いる場合の受精方法は顕微授精となります。

4.胚培養

培養器内で、受精後の胚が分割成長していくのを観察します。受精後2~3日目の初期胚まで培養する場合と、5~6日目の胚盤胞まで培養する場合があります。

Topic

当院ではタイムラプスインキュベーターという新しい培養器を用いた胚培養が可能です。胚の発育過程を詳細に観察することで、より質の良い胚の選択が可能となります。

5.胚移植

培養した胚を子宮内に専用のカテーテルを用いて移植します。採卵した時の状況により、患者さんに合った移植方法を提案いたします。胚移植は痛みも少なく短時間で終了します。胚移植後は問題なければすぐご帰宅いただけます。

新鮮胚移植:採卵後2~5日後にすぐに胚移植を行う方法です。採卵の状況で問題がなければ提案させていただきます。
凍結胚移植:採卵後に培養した受精卵を凍結保存し、翌月以降に凍結胚を融解して子宮内へ移植します。

Topic

凍結胚移植を行う時は、患者さんの状況に合わせて移植方法を選択しています。
自然周期:自然の排卵周期に合わせた胚移植の方法です。
人工周期:ホルモン剤を用いて人工的に子宮内膜を調整した胚移植の方法です。

6.胚凍結

培養した胚を一時的に液体窒素のタンク内に凍結して保存する技術です。初期胚と胚盤胞のどちらの状態でも凍結可能です。採卵の状況で一旦全ての胚を凍結保存する全胚凍結保存や、胚移植後の余剰の胚を凍結保存する場合などがあります。

Topic

凍結開始後は長期間の保存が可能であり、凍結期間が長くなる事での胚へのダメージはほぼありません。
当院では独自の胚選択基準を設けており、良好胚のみを凍結する方針としております。
また独自の胚凍結融解技術を併用しており、治療成績の向上を目指しております。